刺青除去ができるクリームってどうなの?
刺青の除去ができるという触れ込みのクリームなどが多く販売されています。クリームを塗るだけで刺青を消すことができるのであれば、こんなに楽なことはありません。その効果のほどはどうなのでしょうか?そもそも刺青除去クリームとはどんなものなのか?そんな疑問にお答えしましょう。
医療機関で行われている刺青除去術としては、切除法やレーザー治療などがあります。これらは刺青を消す効果が医学的に確認されており、医療行為としても認められたものなので効果も分かりやすいのですが、クリームなどを使った刺青の除去については明確な評価や基準がありません。あくまでも主観によるところが大きいので、「自分は刺青が消えた」という人が1人でもいれば、効果があったという「評判」があるという事実が残ります。 このあたりがクリームなどを使った刺青除去についての難しいところで、曖昧であるがゆえに憶測も広がります。「逆効果で肌が変色する」「その部分だけ皮膚の色が違って見える」といった噂が広がってしまうのも、明確な基準によって効果を評価できないからでしょう。
具体的な商品名は敢えて伏せておきますが、刺青除去クリームと銘打って売られているものには海外製のものも多く、日本の衛生基準を意識したものではないという点にも注意が必要です。 刺青除去クリームとして売られているものの大半は、美肌効果を持つ成分を配合することで色素を溶かし、消してしまうという効果を謳っています。 ここで少し想像してみていただきたいのですが、どんなに洗っても流れていかない刺青を消すことができるような成分が果たして安全な成分であると言い切れるでしょうか。発がん性のある物質や強いアレルギー反応を起こす物質が配合されていることも少なくないので、医学的な見立てのないままにこうしたクリームを使用することにはかなりのリスクがあると言わざるを得ません。
ここもうひとつ、刺青がどういう仕組みで肌に色を付けているのかをおさらいしておきましょう。刺青(もちろんタトゥーも同じです)は人体の皮膚の中で真皮層という部分に色を付けることで模様を描きます。皮膚は2つの層で成り立っていて、表面に近い部分を表皮、その内側にある部分を真皮といいます。つまり、刺青は表皮ではなく真皮に色をつけているので、クリームを皮膚に塗ったところで表皮にしか届かないのです。 刺青除去クリームに医学的な根拠がないというのはまさにこの点で、表皮に対して美白効果を発揮したとしても真皮は何も変わらないというわけです。それどころか、強い脱色効果を持つ物質をデリケートな肌に直接つけることで刺青を消すどころか別の変色や痕を残してしまうかも知れないので、やはり「素人療治」には危険が付きまといます。 それなら真皮層にまで作用するような治療器具やクリームなどがあれば良いのに、と思われるかも知れませんが、真皮層にまで作用することは治療行為に当たるため、医療機関で医師による治療しか認められていません。 やはり、安くて手軽なものにはそれなりの理由があるということで、軽い気持ちで「ダメもとだから」とやってみたことが取り返しのつかない結果を招くこともあるので、よく分からないメーカーの製品や妙に安いものは避けたほうが無難です。