気に入らなくなったら消せばいい…という誤解が招く刺青の不幸

医療機関に行けば刺青(タトゥー)をいつでも消せるので、気に入らなくなったり不要になったら消してもらえばいいという軽い気持ちで刺青を入れる人は、意外に多くいます。 ちょっとした遊び心でやるならシールで刺青を入れたようにドレスアップできるものや、ストッキングを履くと足に刺青が入っているように見えるものなどがあるのでそれで十分ではなかとも思いますが、そこからエスカレートをしてその延長線上で本物の刺青を入れるという人もいます。 要らなくなれば消せばいいという感覚で刺青を入れる人たちに対して、その代償が決して小さくはないことを、知っていただければと思います。

そもそも論になりますが、洗ったくらいですぐに消えるようでは刺青の意味がありません。江戸時代には罪人であることが分かるように体に目印を入れる風習がありましたが、これも「前科者」である事実を本人の意思に関係なく知らしめるために行われていた刑罰の一種です。自分で洗い流せるようではこの刑罰も意味を成しません。 現代の刺青は本人の意思によって入れますが、そこには何らかの強い決意が伴っていることもあります。「その筋」で人生を歩んでいく決意や、亡くなった肉親の名前を入れて自分のそばにいるという意識を持つなど、これらの「決意」は、刺青が簡単に消せないものだからこそ意味があるものです。 逆に考えるとこれほど強い決意がないと、普通は入れることがなかったのが刺青なのです。 事実として、刺青を消したいというご要望で来診される方々の多くは「若気の至り」や「オシャレだと思った」という理由で刺青を入れた方が圧倒的です。 そこまでの強い「決意」がなければ、やはりいつかは消したくなるということなのかも知れません。

当院も刺青除去治療を行っているので例外ではありませんが、刺青の除去を希望する多くの患者さんは刺青を完全に消せる、しかも簡単に消せると思いがちです。「気に入らなくなったら消せばいい」と思っているからこそ、軽い気持ちで刺青を入れたのだとも言えますが。 しかし、刺青を完全に皮膚から取り除く方法は存在しません。完全に消すということだけにこだわるのであれば、刺青が入っている皮膚ごと除去するよりも確実な方法はないということです。 最近よく聞かれるレーザー治療は、刺青を「消す」のではなく「目立たなくする」ことを目的とした治療です。

刺青を消すとなると、皮膚の中に沈着している色素を取り除く必要があります。切除法は皮膚ごと取り除くので確実ですが、皮膚の中から色素だけを取り除くのは簡単なことではありません。 そこでレーザーの登場となるわけですが、レーザー治療で行っていることは色素を少しずつ目立たなくしていくという作業です。完全に取り除くことはできないという認識があまり正確に広まっていない感があるので、刺青除去をお考えの方、もしくは刺青を入れることをお考えの方にはぜひ知っておいていただきたい事実だと思います。

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