彫り師は医師免許が必要?大阪の裁判で注目の判決
ご存知の方も多いと思いますが、2017年の9月に刺青を入れる彫り師に対して注目の判決がありました。結論から述べますと判決では検察側の主張を認め、「刺青を彫る行為は医療行為に当たる」と結論付けられました。これにより、今後彫り師として活動するには医師免許が必要であるという見解になるわけですが、そうなると彫り師としてやっていけないという声も上がっています。 被告側は控訴をしているのでまだまだ司法の判断は最終的に確定していませんが、この件について医師の立場として見解を述べてみたいと思います。
刺青を彫る行為は確かに危険であるのは、明白です。人間の皮膚に針を刺してそこに染料を流し込んでいくのですから血が出ることもありますし、それだけでも危険を伴います。 医療機関で人の体に針を刺すというと注射を想像しますが、注射針の管理はとても厳格で、それだけリスクを伴う行為であることが分かります。もちろん、注射をできるのは国家資格を持っている医師と看護師だけです。 その他にも人の体に針を刺す職業といえば鍼治療を行っている鍼灸院を思い浮かべますが、これにもやはり鍼灸師の国家資格が必要で、治療の現場では使い捨ての針を使用するなど、こちらもやはり厳格に運用されています。 人の体に針を刺すという意味では同じことをしている彫り師だけが、特に免許も必要なく営業できているというのは、確かに違和感があります。
実際、彫り師が針を使い回したことによってウィルスに感染した例も多数あります。よくあるのがC型肝炎で、アウトロー系の人たちで刺青を入れている人の多くが罹患していると言われています。 かつては覚醒剤の回し打ち行為がウィルスを蔓延させていたという指摘もありましたが、近年では刺青を彫る際に感染した事例の方が注目されています。
今回の判決は、罰金15万円という比較的軽微な内容でした。当初罰金30万円という略式命令だったので半分に減刑されたことになりますが、被告側の彫り師は納得しておらず控訴をしています。 通常、医師法違反となるともっと罪が重いはずなのですが、この程度の処分にしているのは司法側もある程度は刺青の文化や彫り師の生活に配慮してのことでしょう。しかし、これが確定すると判例となり、日本全国の彫り師がいつ逮捕されるか分からず、そしていつ罰金15万円を支払うことになるか分からないのは彫り師としても納得がいかないことと思います。 弁護側は職業選択の自由を侵害しているというロジックで抗戦の構えですが、刺青そのものに対する社会の冷ややかな目線を考えると、「軽微な処分」という形ではあるものの医師法違反という違法行為であるという判断が今後も司法で下されるのではないかと思われます。