刺青を入れた人が「消したい」と思うまでの心境

一旦はファッション感覚で刺青を入れたものの、やっぱり消したいと思う人の心境というのはどんなものでしょうか。全く刺青に興味がない人、また刺青に対して批判的な考えを持っている人にとっては、「だから言わんこっちゃない」というところかも知れませんが、お金をかけて痛い思いをして刺青を入れたことには理由があったはずです。しかし、それを消したいというのですから、その間に一体何があったのかと私も気になることがあります。

直接的な不利益はないものの、多くの患者さんが感じているのがイメージの悪さです。もちろんそんなことは承知の上、もしくは敢えて悪いイメージだからこそ刺青を入れたかったという人もいたでしょう。 しかし、元プロ野球選手の清原和博、歌手の酒井法子といった超有名人が続々と覚醒剤事件で逮捕されると、そのたびに「刺青が入っている」こともクローズアップされます。 こうした事件が報道される時に、「覚醒剤に手を染めた頃に、刺青を入れた」というコメントもよく見かけます。こうした論調の裏に「刺青=犯罪の入口」というイメージがあるのは間違いなく、有名人ではなくても刺青がある人を見ると何か悪いことをしているのではないかと白い目で見られてしまうのです。 その結果、その白い目に耐えられない人が刺青を入れたことに後悔するという流れになるワケです。

白い目というのは、単にそうみられているだけなら特に実害はありません。しかし、刺青があることで日本社会にはさまざまな不利益があります。 刺青があることを理由に被る不利益を少し挙げてみただけでも、こんなにあります。

・温泉、プールなど肌を露出する施設に入れない
・結婚、就職などの障害になる
・MRI検査を受けられない
・生命保険に加入できない

このうち、上の2つは社会から持たれているネガティブなイメージによるものですが、下の2つは医学的な根拠によるものです。MRI検査は強い磁力が発生するため、染料の中に金属性の物質を含む刺青だと皮膚ごと引っ張られてしまい、大変なことになります。もう1つの生命保険に加入できないというのは、刺青を彫る際に使う針が不衛生である可能性があり、感染症などのリスクが高いことが理由です。 この4つ以外にも、細かいことを含めるとまだまだ不利益はあるでしょう。「ここまで世の中から疎外されると思っていなかった」というのは、軽い気分で刺青を入れたものの消したいと思うようになった人の多くに共通する心境です。

百害あって一利なしと感じた人が検討するのが、刺青の除去です。刺青を消すクリームなど色々なものが売られていたり、自分で消す方法なども紹介されていますが、これらには医学的な根拠がないばかりか素人療治の危険が伴います。 皮膚へのダメージは避けられないので、そのダメージを少しでも軽減するために医療機関による適切な治療が必要です。 一度失敗すると取り返しのつかないことになりやすい刺青の除去だけに、医療機関で綿密に相談をした上で最善の治療法を選択してください。

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