肌色の刺青を上塗りすると刺青が消える??

壁に落書きをする悪質ないたずらの対策として、その上からペンキで壁と同じ色を塗るという方法があります。上からペンキを塗っているだけなので根本的な解決にはなりませんが、ひとまず下品な図柄であったり意味不明の「グラフティ」のような図柄は見えなくなるので、景観の品位を保つことができます。 当初は意志を持って入れた刺青を落書きと同レベルで扱うのは気が引けますが、落書き対策と同じような方法で刺青を見えなくしたり、分かりにくくすることはできないものだろうか?という考えは、実は刺青除去の世界にもあります。刺青を消したいと思った人が、その上から肌色の刺青を入れて分からなくできるのでは?というわけです。そんなことが可能なのかどうかというご質問をいただいたことがあるので、それに対するお答えです。

すでにある刺青の上から刺青を入れることは、不可能ではありません。まさに壁の落書きを消すかのように、上から肌色の刺青をきれいに入れることができれば、その後ろにある刺青が見えにくくなるということはあり得るでしょう。 果たしてそんな色の刺青を入れることができるのか?という疑問も湧いてくると思いますが、ホワイトタトゥーといって白色のインクを入れるタトゥーもあるくらいなので、インク同士を混ぜ合わせることで色は何でも可能です。 しかし、だからといって黒や紺色の図柄の上に肌色のような薄い色を乗せても、その後ろにある濃い色が透けて見えてしまう可能性もあります。すでに入っている刺青がそれほど皮膚の深いところに彫られていなければ、その上に入れるスペースがほとんどないということもあります。 可能だが万能ではない、というのが「上塗り」に対する結論です。しかも、この方法の本質的な問題はここではありません。

刺青の上にまた刺青を入れるということは、再び彫り師の手によってインクを入れていく必要があります。この時の感染症リスクだけでなく、その後の傷の治りが悪くなることによる感染症のリスク、さらに2度目の刺青がうまくいったとしてもその効果がいつまでも持続するかというと、実はそうでもありません。 ホワイトタトゥーで使用するような色の薄いインクは周辺の色素を吸収する働きがあるそうで、彫ったばかりの時は後ろの刺青を隠してくれていたとしても、やがて2回目の刺青が目立つようになってきます。 そうなってしまうと、1回目の刺青が見えていた時よりも見た目も悪くなるので、かえってやらない方が良かったということにもなりかねません。 やはり、刺青と落書きは別物です。根本的な解決には医療機関での適切な治療しかないという結論は変わりません。

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